誰が為に
…オレは永遠の世界から帰ってきた。
土曜日。
今日は午後の授業はない。
「七瀬、帰るぞ」
「うん、ちょっと待ってって…いつ、そんな仲になったのよっ!」
「いいじゃないか?」
「駄目駄目!だいいち今日は用事があるのよ」
「たまには部活にでも行きなさいよ」
「……そうか」
「おーい、長森。一緒に帰らないか?」
「ごめん、浩平。今日は繭と約束があるんだよ」
「それならオレもつき合おうか?」
「お買い物だよ?浩平退屈しちゃうよ」
「商店街でも覗いてきたらいいんじゃないかな」
「…ああ……そうだな」
「…茜は……いないな」
「住井!ゲーセンでも寄って帰ろうぜ」
「悪いな。今日はやらなければならない重大な使命があるんだ」
「折原。俺は行けないが、今日は新台が入るはずだ。モニターしてきておいてくれ」
「……ああ…分かった」
だけど、一年の空白は大きかった。
一人で商店街に向かう。
適当にゲームをして時間をつぶす。
ただ手を動かしているだけ。
オレは何のためにこの世界に帰ってきたのだろう。
オレをこの世界に呼び戻してくれた親友は……もういないに。
一瞬、親友の所に行こうかという考えが浮かんだ。
「……………帰るか。」
「ただいま……ん?」
靴がある。それもたくさん。
「あ、帰って来たよ」
家の中が騒がしい。
「なんだ、いったい?」
「みゅ〜♪」
「椎名?」
玄関に長森と椎名が迎えに来る。
「浩平、こっちだよ」
「お、おい、長森。いったいなんなんだ…?」
オレは居間へと引っ張られて行った。
「っ!」
居間は飾り付けやらなにやらで、パーティー会場と化していた。
「こ、これは…?」
「浩平君の誕生パーティーだよ。去年は誰もお祝いしかったっていうから、二回分まとめて盛大にやろうってことになったんだよ」
「…みさき先輩」
「ちゃんとケーキもあります」
「…茜」
「感謝しなさいよ。このクッキーは私が作ってあげたんだから」
「…七瀬」
『おめでとうなの』
「…澪」
「みゅ〜っ!プレゼント!!」
「…椎名」
「繭と2人で選んできたんだよ」
「…長森」
「そしてっ!パーティーといえばなくてはならないのは酒っ!宇宙人もダウンさせるという隆山の地酒『鬼ごろし』を入手してきてやったぞっ!」
「…住井」
みんな……それで……。
目の奥が熱くなる。
「住井君、お酒は駄目だよ!」
「堅いことはいいっこなしだよ、長森さん」
「もう〜、里村さんもなんか言ってやってよ!」
「…飲んでみたいです」
「茜ちゃんっていける口なんだぁ」
「あ〜ん、みさき先輩までーーー」
「まあ、瑞佳、たまにはいいじゃない」
『はやくはじめるの』
「みゅ〜♪」
「ああっ!繭、それ飲んじゃ駄目っ!!」
みんなの笑い声が聞こえる。
一年の空白なんか問題じゃなかった。
オレは…ひとりじゃない。
氷上……いずれ、オレもお前の所に行く。
でも、もう少し待っててくれ……いっぱい土産話をもって行くからな。
「楽しみにしてるよ」
「!」
今、あいつの声が聞こえたような…。
「さあ、折原!始めるわよ!」
「今日は飲むぞっ!!」
「だから、飲んじゃ駄目だってっ!!」
「ああ……やるかっ!」
誰か一人の為じゃない。
こんな、オレでも待っててくれた人達がいたんだ。
それだけで胸がいっぱいになる。
…ありがとう。親友。
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