詩子の苦悩
とある日。
詩子は茜夫婦(浩平)の元にやってきた。
「茜……ちょっと相談にのってもらいたいんだけど…」
詩子はなにやら元気がない。
「…嫌です」
「完っ!!」
「……折原君って酷いよね」
浩平の一言に詩子は泣いていた。…茜の言葉も、結構酷いと思うが。
「ふう…。仕方ないですね」
茜はそう言って、白いギターを取り出し…。
「それはやめてっ!!…ろくなことにならないから」
確かに。
「…残念です」
茜は、本当に残念そうである。
「…で。相談ってなんなんだ?」
なにやら深刻そうな詩子を見て、流石に浩平は話を戻した。
「うう…。実は…」
詩子は話を切り出そうとしたが、浩平にチラチラと目をやり、なかなか話を切り出さない。
「…詩子。浩平は気にしなくていいです。どうせ、いてもいなくても同じようなものですから」
「……」
酷い言われようである。仮にも夫なのだが。
「そう?じゃあ、実は…」
そう言われて、早速話しを切り出す詩子。
「………」
立場がないなぁ、浩平。
「実は……を大きくするにはどうしたらいいかな?」
蚊の泣くような声で茜に告げる詩子。当然、浩平は無視だ。
「…よく聞こえませんよ?もっと大きな声で言ってください」
「む…胸を大きくするには?」
「……」
「……」
茜と浩平は黙り込んだ。もっとも、浩平はその前から黙り込んでいたが。
詩子の相談。
それは、胸を大きくする事だった。
「じゃあ、オレが揉んで…」
(ギロッ!!)
「なっ、なんでもありませんっっ!!」
浩平は言い出した言葉を飲み込み、直立不動の姿勢で茜に答えた。
…完全に尻に敷かれている。
「…でも、高校の時からは成長したのではないんですか?」
浩平を軽くひとにらみした後、茜は詩子に訪ねた。
「ううっ…それが……全然、変わってないのおおおおぉぉぉーーーーーっっ!!」
涙ながら訴える詩子。結構、切実な悩みらしい。
余談だが、詩子は未だに独身である。
「では…未だに77センチなのですか?」
「なっ、77センチっ!?」
茜の台詞に驚く浩平。
「そ、それじゃあ、繭と一緒じゃないかっ!?」
「…なぜ知ってるんですか?」
続けざまに浩平の口から出た言葉を、茜がにこやかに笑いながら問いただす。
当然、室温は氷点下。
「うわああああぁぁぁ〜〜〜んっ!!繭ちゃんと一緒だなんて嫌〜〜〜っ!!」
だが、そんな二人に構わず、詩子は泣き出してしまった。
ドガッ!!ザスッ!!ゲシッ!!グシャ!!
「このままじゃ、結婚もできないよ〜〜〜っ!!」
……………ズゴシャアアアアァァァンッ!!
「…それは胸のせいだけではないと思います」
適度な運動を終わらせ、息一つ乱すことなく詩子に告げる茜。
「…ぐっ……いいじゃ…ないか……きっと…」
息も絶え絶えに詩子を慰める浩平。
「…『きっと』…なに?」
泣きやんで、浩平の言葉を待つ詩子。
「……マニアックな奴らに大うけだ」
「いやあああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっっ!!」
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