それは突然の出会い   − 1 −


 「わたしのこと…好き?」
 …目が覚めるとそこはいつもと変わらない風景だった。
 もうすぐ春だというのにやけに寒い部屋。乱雑に部屋の隅に積まれた本。壁に掛けられた学生服。そんな今更いうまでもなく見慣れた朝の風景。それなのに…?
 「ねえってば」
 …中学生というには幼く、小学生と言うには大人びてる。
 黒いノースリーブのワンピースがよく似合っていた。整った顔立ち。セミロングの髪は後ろで三つ編みに纏められている。かなりの美少女と言ってもいいだろう。
 「………」
 で…。こいつ、誰?
 「どうなの?」
 どうなのって…言われてもな…。
 「たぶん……好きじゃないんじゃないかな?」
 とりあえず事実をそのまま伝える。
 朝一番に見知らぬ美少女が現れて『あなたのことが好きなの』『わたしを無茶苦茶にしてぇっ!!』と言われて理性をなくす程、俺はケダモノじゃあない。 
 「そう……」
 俺から視線を逸らして俯く少女。そして…。
 「……良かった♪」
 …にっこりと笑った。  
 「…え?」
 少女は背中に手を回すと、小柄な身長の倍はあるであろう大きな鎌を取り出した。そして、そのまま微笑みを崩すことなく大鎌の刃が振り下ろされる。
 …ザスッ。
 反射的に身を捩った俺のすぐ脇を掠めてベットに突き刺さる大鎌の刃。朝日を受けてキラリと光るその刃が眩しい。よく手入れがなされているようだ。
 …って、待てっ!!そんな冷静に観察してる場合じゃないだろうっ!?
 「どういうことだっ!?」
 俺は少女を睨み、強い口調で問う。
 こんな出来事を普通に受け止めるられる程、俺は人生を積んではいない。
 「その身体より大きい鎌はどっから出したんだっ!?」
 あきらかにおかしかった。
 「論点…ずれてない?」
 呆然とした表情で、突き刺さった鎌の柄を掴んだままの姿勢で呟く。
 「普通は『なんで俺を殺そうとするんだ』とか『お前はいったい何者なんだ』とか聞かない?」
 「ふっ……そうやって話題を逸らそうとしても無駄だっ!!」
 俺はビシッと指さして言い放った。
 「………」
 「………」
 しばしの沈黙。
 「……殺そうとしたの?」
 「うんっ♪」
 …少し冷静になって考える。
 美少女。巨大な鎌。殺そうとした。音符付きの返事。
 「お前…お前は、まさか…?」
 現実にはありえないと思っていた。漫画やゲームではお馴染みの設定。まして、そんなことが自分の身のおころうとは…。
 「うふふ…ようやく状況を把握したみたいだね」
 勝ち誇ったように笑う少女。さっきまでの無邪気な笑みとは違う。どこか影の含んだ笑み。
 「殺したい程、俺を愛していたのかっっ!?」
 「違うわぁぁぁっっ!!」
 俺の出した結論に間髪入れずツッコミが入る。素質は充分なようだ。
 少女はベットから鎌を引き抜き肩にかける。
 そして、やれやれと言った表情で告げた。



 「わたしは死神だよ」






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