折原少年の事件簿153(その1)


その日、俺は漢字テストの最中に正体不明の謎の女生徒の姿を目撃してしまった。
あまりにも不可解なその女生徒を、既に152件もの難事件を解決した、粋で鯔背な高校生名探偵たるこのオレがそのままにして置く訳にはいかない。
謎の女生徒の正体解明を心に誓ったオレは、放課後に助手の椎名とともに調査へと乗り出した。


浩 平「ぎ……ぎゃああああぁぁぁーーーーーっ!!」
教室に響き渡る悲鳴。
浩平は、頭を机の下に隠して、ぶるぶると震えていた。
椎 名「みゅ?みゅ?(一体どうしたのかしら?何か重要な証拠でも机の下にあるの?)」
浩 平「ゆ…ゆゆゆ幽霊なんかいない…いるはずがないだ…はは…い〜な〜い〜ん〜だ〜…」
長 森「浩平?もしかして……」
七 瀬「……幽霊が怖いとか?」
そんな二人の声も、浩平には届かず、浩平はまだ震えている。
どうやら、そうらしい。
浩 平「おおおっお化けだったら、頭に毛が三本しか無いはずだああああぁぁぁーーーっ……」


10分後。
ようやく浩平が、机から頭を出して、立ち上がった。
浩 平「椎名!これは、誰かがオレを陥れようとしているに違いない!!本格的に調査するぞっ!!」
きりりっと引き締まった顔で椎名に話しかける浩平。
結構かっこいい。………さっきのがなければだが。
椎 名「ほえ。…みゅ〜っ!(分かったわ。・・・この世の真実を暴くのが私達の使命だものね!)」
長 森「浩平。もう大丈夫なの?」
浩 平「何がだ」
長 森「さっきまで、あんなに震えてたんだよ。怖くないの?」
浩 平「あれは冗談だ」
真顔できっぱりと言い放つ浩平。
七 瀬「………あんたって奴は」
あきれる七瀬。
長 森「でも、幽霊はいるんだもんっ!私、小さい頃に見たことがあるんだもんっ!!」
長森の言葉に、びくっと浩平の肩が動く。
しかし。
浩 平「ふっ。長森…ならば訊くが…ではなぜ、殺人事件で殺された被害者は、幽霊となって『こいつが犯人なんだよ!逮捕するんだもんっ!!』とか、言わないのだっ!!」
椎 名「みゅ。みゅ〜っ!(極めて論理的、且つ、科学的な推理だわ。現在も警察機構が存在することから見ても、その推理には十分な根拠が見受けられるわね!)」
長 森「…そ、その被害者のセリフ、なんだか嫌なんだもんっ!!」
七 瀬「机の下で震えながら、そんな事考えてたのね…」
浩 平「そう褒めるなよ」
額にかかった髪を掻き上げる浩平。
七 瀬「貶してんのよっっ!!」
浩 平「まず、一番怪しいは、住井だ!!行くぞ、椎名っ!!」
七瀬は無視された。
七 瀬「………ぐすっ」
椎 名「ほえ。ほえ(確かに彼には普段から不審な行動が多く見られるわ。さらに、事件の起こった時、すぐ近くにいた事も極めて重要な点ね)」
しかし、浩平が走り出そうと『太陽に吠えろ』のテーマソングをラジカセにかけようした時、住井が浩平の背後から声をかけた。
住 井「俺なら、ここにいるが?」
浩 平「どわああああぁぁぁっ!!」
背後から声をかけられて、慌てる浩平。
何故か異様に慌てている。
浩 平「…はぁ…はぁ…はぁ…おおお脅かすなよ、住井っ!!一体、いつからそこに?」
住 井「お前が、悲鳴をあげて、机の下に頭を隠した辺りからだ」
浩 平「………」
浩平は返す言葉がないようだ。
暫く浩平と住井は黙って見つめ合っていた。
そして、今まさに背後に薔薇の花が咲くかと思われたその時、長森が浩平を呼んだ。
長 森「浩平!!今、なんか白いものが廊下の方を通ったんだもんっ!!」
七 瀬「た、確かに……」
頷く七瀬。
椎 名「ほえ?(そうかしら?)」
椎名は見なかったようだ。
浩 平「そ…そそそそそ、そんな事いって驚かせようとしても、むむむ無駄だぞ」
では、なぜどもる?

がたっ。……がたがたっ。

浩 平「っ!!」
教室のドアの方から音がする。
まるで、何かがドアを開けようとして、上手く開けられないような……。
長 森「………」
住 井「………」
椎 名「?(?)」
浩 平「………っ(ごくっ)」
一瞬、教室が静まりかえる。
七 瀬「…だ、誰かいるの?」
皆、無言でドアを見つめる中、七瀬が声をかけた。

がらっ!!

その瞬間、勢い良くドアが開き、真っ白い、ふわふわしたものが現れた。
浩 平「ぎゃああああぁぁぁぁーーーーーっ!!」
デニムを裂くような男の悲鳴が、またもや教室に響き渡る。
それと同時に浩平は側にいた長森に抱きついた。
ぷにゅ。
長 森「あんっ!こ、浩平…」
もみもみ。
長 森「はあぁっ!そ、そこは…」
もみもみもみ。
長 森「はふんっ。…痛いんだもん。もっと、やさしく……」
七 瀬「何しとんじゃああああぁぁぁーーーーーっ!!」

どげしーーーーーっ!!

浩 平「ぐはっ!!」
七瀬の踵落としが浩平の頭頂に決まる。
浩平は、後ろから長森に抱きつき、胸を揉んでいたのであった。
浩 平「わ、わざとじゃないんだ!!ちょっとびっくりして、思わず胸を擽ってしまっただけなんだっ!!」
七 瀬「擽るなっっ!!」
椎 名「みゅ〜っ♪(言いたいことはそれだけかしら♪)」

どかっ!ばきっ!げしっ!ごすっ!……。

浩平は七瀬と椎名の二人に袋叩きにあっていた。
長 森「……別に、いいのに……」
長森は口に手をあてて、頬を染めていた。
白い影「……?」
白い影は一気に無視された。…無理もない。

するっ。

そして、その白い影はそんな光景を見て、不審に思いながらもその正体を現した。
 澪 (にこっ)
 澪 『見て見てなの』
白い影は、目と口を書いたシーツをかぶっていた澪だった。
 澪 『今度、舞台で使う衣装なの』
嬉しそうにスケッチブックで語る澪。
七 瀬「へえ〜、そうなんだ」
長 森「凄いね。びっくりしたんだよ!」
椎 名「みゅ〜っ♪(誂えたみたいにぴったりだわ♪)」
浩 平「…そ…そんなもん来て歩くな……」

がくっ。

浩平は息絶えた。
七 瀬「だらしがないわね」
長 森「でも、浩平は立派だもん!!住井君なんか……」
長森が住井に目を向ける。
………住井は白目をむいて、永遠の微睡みの世界へと旅立っていた。






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