雨に濡れて


冷たい雨。
まだ春前の雨は、体の芯まで凍えるように冷たい。
でも、この雨が冷たいのはそのせいだからじゃない。
あの人がいなくなったから。
大好きな人。
この世界でただ一人の。
周りを見ても知らない人ばかり。
泣き出したい。
でも…。

「!!」

そんな時、背中から抱きしめてくれた大きな手。
あたたかい温もり。
雨に濡れてずぶ濡れの手なのに。
その手に身を委ねる。
安らぎが心を包む。
独りぼっちじゃないって分かるから。



「コローーーっ!!」

「!!」

あの人が僕の名前を呼んでいる。
僕を抱きしめてくれた手が、そのままあの人の手に向かう。

「うわああああぁぁぁっ!!コローーーっ!!探したんだぞーーーっ!!」

泣きながら僕を抱きしめてくれる手。
大切な人の腕の中。
やっと帰れた。

「ありがとう!!お姉ちゃんっ!!ありがとう!!」

「うんっ♪」

僕の大切な人は、何度も振り返ってお礼を言ってくれた。
僕も一緒に振り返る。
でも、僕の大切な人を見つけてくれた人は、とても悲しそうだった。
…さっきまでの僕のように。



「!!」

でも、もう大丈夫だね。

最後に振り返った時。

その人も、大切な人に抱きしめられていたのが見えたから。






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