肺の小部屋
<肺結核とは>
肺結核は,戦後激減してあまりみられなくなった病気です。若い医師,呼吸器を専門としない医師では
肺結核を見たことないという場合もあります。また,結核の患者さんを入院させる結核病棟の数も減ってるのも事実です。
しかし,肺結核は過去の病気ではありません。今まで(H12年9月現在),私の所には5名ほど来たことがあります。
ですから,私の所のような小さな診療所でも,たまに経験する病気です。
97年の日本全国の新規発症者は約4万2千人。青森県では457人新規に発症しています。この数字を少ないと見るかどうかです。
けっして少ない数字とは言えないと思います。
肺結核とは,結核菌によって起こされる肺感染症です。
感染は,結核菌を排菌してる人からの咳などによる飛沫により経気道感染します。ですから,結核の患者さんの発見が
遅れると集団感染を起こしたりします。インフルエンザのように側にいただけで,すぐに感染するものでもありませんが
一緒に生活したり,長時間一緒にいれば感染する可能性があります。
1.症状
主な症状は,発熱,咳,痰です。ですから,風邪と一緒の症状です。
1.発熱
典型的な場合は,微熱(37ー38度)で朝には下がるが夕方には高熱というパターンが典型的な例です。
もちろん,39−40度の高熱が出る場合もあります。また,寝汗,倦怠感を伴います。
2.咳
昔は,乾性の咳(乾いた咳)と言われていたようですが,今は,痰のからんだ咳(湿性の咳)が多いです。
3.痰
昔の時代をテーマにしたドラマなどでは,肺結核の青年が咳とともに血を吐くというのがよくありますが,
今は,そのような患者さんはあまりいません。せいぜい,血痰(血の混じった痰)がみられるぐらいです。
結核であれば,すべて血痰が出るというわけではありません。むしろ,血痰のでる頻度は少ないです。普通の粘液性,
または膿性の痰の場合が多いです。ですから,風邪をこじらせて気管支炎になったのと同じような感じです。
普通の風邪と違うのは,微熱,咳と痰がいつまでも続くことです。ですから,長引く風邪の場合は,病院を受診して下さい。
2.診断
1.胸部写真
結核に特徴的な陰影は空洞です。しかし,空洞がある場合はかなり進行した場合です。そして,開業医を訪れる結核の患者さんは初期が多いですので,空洞をみることは殆どありません。
ですから,結核を思いつかないと診断が遅れる場合もあります。
症例1
左肺の上に陰影
拡大写真
赤い○は,場所がわかるように印をつけたものです。
上記写真の症例は,1週間前より咳,痰,微熱(37.5度)があり,また鼻水,咽頭痛もあるとの事で受診しています。症状的には,まるきり風邪の
症状です。胸部写真で左上肺野に陰影があり,結核も疑われたので痰の検査してます。痰からはガフキー7号(結核菌やや多数みられる)が確認され肺結核として
結核専門病院に紹介してます。
初感染の肺結核は,上肺野に陰影を認める事が多いので,この辺に陰影が有る場合は結核菌の検査をしておく必要があります。
症例2
右肺の上に空洞
拡大写真
1年半前から症状があった患者さんで,右上肺野に空洞を形成しており肺結核の典型的所見です。
この様に長期間治療しない事は,周囲に結核の感染を拡大ことになり多大な迷惑をかけます。
症例1のような段階で診断をつけて,速やかに治療することが大事ですので,微熱,咳,痰が続く場合は病院を受診しましょう。
また,肺結核は老人の病気と思っている方もいますが,当院で診断した患者さんは20代,30代の方ばかりです。若いから大丈夫と勝手に決めないで下さい。
2.喀痰検査
痰に結核菌が確認されれば,肺結核は確定します。
しかし,胸部写真に結核を疑う陰影があるにもかかわらず,結核菌が検出されない事もあります。菌が少ないと結核菌を確認できないので,菌の培養もします。
しかし,結核菌は普通の菌と違い培養に8週間かかります。ですから,8週間後に菌が検出されるという事もあります。
当院の例でも,検鏡では結核菌が検出されなかったのですが,6週間後に培養で陽性に出た例があります。
この症例は,空洞はなかったのですがそれ以外の所見が結核を強く疑わせるものだったので,受診した翌日には結核菌は検出されませんでしたが結核専門病院を紹介してます。
最近,8週間の培養を待たず,新しい技術で早期に診断する方法も開発されました。
3.気管支鏡検査
喀痰で結核菌を検出されず,診断困難な例もあります。そのような場合,気管支鏡検査する場合もあります。
気管支鏡とは,肺の管(気管支)にファイバースコープを入れて,生検したり,ブラシをかけて菌がでないかみたりします。
3.治療
1.入院
結核菌が検出されれば,結核病棟に入院して治療が原則です。菌は検出されないが,結核の疑いが強いので
とりあえず,治療して効果をみる場合など外来治療という事もありますが,菌が検出された場合は入院です。
入院期間は,昔に比べて短くなってますが,治療には半年とか1年とかかります。
2.薬
結核の状態(空洞がある。菌がでてる。耐性があるなど。)によって違いますが次の薬を使います。
1.リファンピシン
2.イソニアジド
3.エタンブトール
4.ストレプトマイシン
5.ピラジナミド
問題はきちんと治療する事です。中途半端に治療すると耐性菌が出現して,治療が困難になります。
早期発見も大事ですが,きちんと治療する事も大事です。
今,結核菌の耐性菌が増えていて問題になってます。
4.BCG
BCGいわゆる「はんこ注射」は結核のワクチンです。しかしながら,BCGで感染を予防できるわけでありません。
BCG接種は,感染しても発病を抑える作用があります。
特に,乳幼児にみられる結核性髄膜炎の発病予防効果があり,結核性髄膜炎は重篤な後遺症を残す事を考えれば
乳児期の早い時期に予防接種を行うことが重要です。
5.肺結核の人と接触した場合
身近に肺結核の人がいて接触した場合,感染したかどうかの判定には難しい問題があります。
胸部写真とツベルクリン反応(ツ反)の検査を行います。
胸部写真に陰影があり,結核菌が確認されれば結核に感染して発病した事になります。
問題は,胸部写真は異常なく,ツ反が陽性にでた場合です。ツ反陽性は単純に結核感染を意味しません。なぜなら,日本では
BCG接種されているため結核に感染していなくても陽性に出るためです。
それで,一応次のような基準があります。BCG接種の有無,結核患者との接触の有無で,決められたツ反の大きさの
基準を越えた場合,感染の可能性があると判断されます。
| | BCG接種してない | BCG接種してる |
| 患者に接触あり | ツ反10mm以上 | ツ反30mm以上 |
| 患者に接触なし | ツ反30mm以上 | ツ反40mm以上 |
| | | 最近の感染が疑われる場合 |
この基準を越えた場合,発病はしていないが感染している可能性があるため,発病を予防する目的で6ケ月間抗菌剤を服用する必要があります。
ただし,この基準を越えれば100%感染したわけでもないですし,基準を越えなければ100%感染してないというわけでもありません。
結核の患者さんとの接触が濃厚だったのか軽かったのか?。ツ反が前から強陽性に出ていなかったのか?。色々な状況により判断しなければならず難しい問題です。
また,発病が感染してから数ヶ月後の場合がありますので,場合によっては数ケ月後に再度胸部写真を撮る
とか,咳,痰など結核を疑う症状が出た場合は再度検査する必要があります。
よく新聞でさわがれる集団感染は,結核の発病者だけではなく,この感染したかもしれないという人数を含みます。そして,大体はこの感染したかもしれないという人たちの人数です。
また,この感染したかもしれないという段階では,他の人が感染することはありませんので無用に恐怖感をつのらせる必要はありません。
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