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<つつが虫病とは?>

つつが虫病とは,つつが虫という小さなダニにかまれて,つつが虫にいるリケッチアという微生物に感染しておこる病気です。 リケッチアは,細菌,ウイルスのような微生物です。
新型つつが虫の場合は,日本全国に見られます。山歩き,山菜取り,茸取り,ハイキングなど出かけた時に感染する危険があります。
ですから,山歩きする人は,是非知っていて欲しい知識です。感染しても的確に診断されれば,何も怖い病気ではありません。

1.つつが虫の種類

つつが虫病は次の2つに分かれます。
1.古典的つつが虫病
秋田,山形,新潟地方などの河川流域で,夏季にアカツツガムシにより引き起こされるタイプ
2.新型つつが虫病
北海道を除く全国でみられ,春または秋に発生するタイプ。農作業,山菜取り,茸取りの際フトゲツツガムシや
タテツツガムシにかまれることにより起こります。

2.症状

古典的つつが虫病,新型つつが虫病ともほぼ同じ症状です。

1.発熱
山に入って,1週間から2週間後に寒気,頭痛,倦怠感,筋肉痛を伴って発熱し,その後39−40度の高熱が続きます。
2.結膜充血,咽頭発赤
結膜充血,咽頭発赤がみられる場合もあります。
3.リンパ節腫脹
刺された近くのリンパ節が腫れます。
4.発疹
発病後3から5日後に,小豆大の淡紅色の発疹がみられます。
ぴんぼけでわかりにくいかもしれませんが,小豆大の発疹です。
5.刺し口
最大の特徴は,刺し口です。刺されてからの日数により違いますが,大体写真のような感じです。
約1cmぐらいの黒い部分,そして周囲は赤くなってます。
左脇の下付近に黒い点があります。拡大写真

この患者さんは,咽頭痛があり耳鼻科受診。その2日後に38度の発熱があり,次の日に当医院を受診してます。
受診時の診察で,この刺し口に気づきまして「つつが虫病」と診断しミノマイシンの投与をしてます。すぐに解熱して,たいした症状もなく外来治療で治癒しました。

写真は,発熱のあった初日から5日目のものです。今までも,何人か「つつが虫病」を見たことがあるのですが,大体こういう感じの頃に見つけてます。中心が黒く,周囲が赤いです。
刺し口は体全体どこにでも見られますが,特に体の柔らかい場所に多く見られます。肩,脇の下,脚の付け根,陰部などです。
写真のような例では,背中の聴診の時に見えますので診断は簡単です。問題が,見つけにくい場所にある場合です。普通,単なる風邪様の症状だけでは,脚の付け根や陰部は見ません。
ですから,一般の人にもこの刺し口を覚えて欲しいのです。この写真を見たことにより,命が救われることがあるかもしれません。

山などに入って,1週間から2週間後に高熱がでて,なかなか熱が下がらず,発疹,リンパ節が腫れがあれば,自分で全身を見て下さい。 写真のような刺し口があれば,つつが虫病は間違いありません。また,見つからなくても,山に入った事を医師に伝えて下さい。
刺し口が見えやすい場所にあれば,医師も気づきますが見えにくい場所にあれば,見落とす事もあります。 普通,医師は風邪症状の患者さんを全員素裸にして診察する事はありません。刺し口を捜すには,それが一番いい方法ですが,そんな事すれば変態の医師と思われるでしょう。ですから,思い当たる事があれば申し出て下さい。 そうすると,全身くまなく診察して,見つかるかもしれません。

6.肝,脾腫大
肝臓や脾臓が腫大することもあります。

3.合併症

重症例では肺炎,心筋炎,意識障害,多臓器不全を起こすことがあります。

4.治療

テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシンなど)を使えば,治ります。

問題が診断がつかないため,適切な抗生物質の使用が遅れることです。最悪の場合,命を落とします。
普通,風邪,扁桃炎などで使われる抗生物質は,セフェム系やペニシリン系が多いです。しかし,この抗生物質では リケッチアには効きません。つつが虫病は症状が発熱,咽頭痛,頭痛と風邪とよく似た症状ですので,セフェム系やペニシリン系の抗生剤が使われ可能性が大きいです。
つつが虫病を疑わない限りは,テトラサイクリン系抗生物質は使われる可能性は低いでしょう。

ですから,写真の刺し口を覚えて欲しいのです。
新型つつが虫病は,日本全国どこでもあります。県により報告例数も異なりますが,青森県では年10人程度報告されています。
全国では千人までいきませんが,年数百人報告されています。よく見かける病気ではありませんが,けっして珍しい病気でもありません。 山歩きの好きな方は,このような病気がある事を覚えてください。

5.付録

先にお断りしますが,ある公的機関を非難するためこの付録を付けるわけではありません。ただ、医師,検査技師の方で似たような間違いをして診断を誤ればこまりますので,付録を付けます。

写真の症例には,後日談があります。
ある公的機関に書類を出してツツガムシ抗体を依頼しましたが,1回目ギリアム株,カトー株,カープ株のIgG,IgMは総て陰性でした。
検査した公的機関は正確に対応して2週間後抗体検査もしてくれたのですが,中間の公的機関が抗体が陰性なのでつつが虫病とは認められないから書類を取り下げるように電話があったのです。
知識のある医療関係者であれば,このような間違いを起こす事ないと思います。抗体は早期では上昇していません。この患者さんの2週間後の抗体は上昇してました。

つつが虫病を見たことない医療関係者でつつが虫病を疑って,検査して抗体が陰性だからつつが虫病でないと,あわてて判断しないでください。写真の症例のように早期であれば,抗体は上昇してません。高熱があって写真のような刺し口があれば,つつが虫病は間違いありませんので 抗体が陰性でも自信を持って治療して下さい。

私が医者に成り立ての頃と思います。新聞か医学雑誌かで読んだ話です。名古屋の医者の娘さんが原因不明の高熱がでて大学病院かどこか大きな病院に入院したそうです。 しかし,病気の原因が分からず色々な手当にもかかわらず亡くなられたとの事です。お父さんがどうしても原因が知りたいと秋田のつつが虫病で有名な先生の所に血液を送り検査してもらってつつが虫病という原因が分かったという話があります。
当時とは違い今では,抗体検査は何処でもできますが,その検査結果の意味を取り違えないで下さい。

症例の抗体検査結果

ギリアム株 カープ株 カトー株
7月7日 IgG 20未満 倍 20未満 倍 20未満 倍
7月7日 IgM 20未満 倍 20未満 倍 20未満 倍
7月22日 IgG 640倍 640倍 640倍
7月22日 IgM 1280倍 1280倍 1280倍



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