●ピルは、エストロゲンとプロゲステロン(厳密にはプロゲストーゲン)の両方が入った合成ホルモン剤なので、二つの女性ホルモンが体内に十分あると脳が錯覚し、自分のホルモン分泌を休むのです(GnRHアゴニストのように、脳に直接作用して強制的に止めるわけではない)。それで、排卵が止まり、月経が止まります。ピルの合成女性ホルモンは、ふつうの月経周期のようなダイナミックな分泌変動はなく、プロゲステロン優位の状態で、単調に一定量で身体の中にあります。そのため、子宮内膜を脱落膜化し(妊娠中や月経直前の子宮内膜の状態)、病巣を弱める効果があると言われています。偽妊娠治療とよばれることもあります。
●ただし、一般的な避妊法としては、三週間使って一週間休むという周期的使用をするので、休薬期間に、ピルの女性ホルモンによってつくられた薄い子宮内膜がはがれ落ちる、消退出血という偽物のミニ月経があります(実際に薄く成長している子宮内膜がはがれるので、減少は月経と同じだが、量は相当少ない)。子宮内膜症で治療として使う場合、消退出血すら痛いという人は、1パック三週間分を休まず続けて、3〜6パック連続使用する方法でもかまいません。1パックに28錠入っているタイプは、最後の7錠は偽薬ですから、連続使用する場合は、ほんとうの薬である21錠の部分だけを続けるのです。高血圧の人とタバコをすう人は使ってはいけない薬です。
●低用量ピルを使ってきた世界の医療者たちの数多くの研究調査によると、卵巣がんと子宮体がんの発生率が減り、良性卵巣腫瘍も減り(卵巣チョコレート嚢胞が入る)、貧血や月経困難症が改善されるとわかっています。副作用としては、ダナゾールと同じような血栓症と虚血性心疾患(心筋梗塞など)が注目されます。しかし、それを改良してきた歴史が、高容量ピル→中容量ピル→低用量ピルなのです。また、むかつきや頭痛は1〜2ヶ月で消えていきます。ピルは、心疾患が増えてくる40代は使わないほうがいいといわれますが、WHOでは、喫煙せず、高血圧のない女性なら、注意しながら使っていいと言っています。
●年単位で見れば、低用量ピルと、GnRHアゴニストやダナゾールは、どちらも排卵を止めて月経を止めるホルモン剤で、病気の時間を止める治療として同等です。違うのは、副作用、使用期限の制限、費用で、どれをとっても低用量ピルが有利です。世界の子宮内膜症の女性たちは、保存手術と低用量ピルを使いこなしながら、ときにはGnRHアゴニストやダナゾールを使うという人生を、すでに80年代から送っているのです。低用量ピルは世界で30年近くにわたり、何億人という女性たちが使ってきた避妊薬です。この世のすべての薬のなかで、もっとも研究しつくされている安定した薬です。
低用量ピルについて、日本ではあまりにもひどい誤解が続きました。副作用を問題として議論することもおかしくはないですが、10代、20代、30代、40代の何十万人という女性たちが、望まない妊娠で中絶している、世界でもめずらしい日本の実態もあります。さらに子宮内膜症の治療薬としてもとても有効です。ダナゾールやGnRHアゴニストと比べたら、低用量ピルの副作用など、実におだやかなものです。
●日本で低用量ピルの導入が承認されたのは、99年6月で、世界でほぼ最後の国としてで、9月から使用が始まりました。
あくまでも生活改善薬である避妊薬としての承認なので、何の保険適応もない自費診療です(病院が自由に価格設定できるが、1パック3〜4週間分で2000円〜3000円が常識)。しかしたとえ自費でも、子宮内膜症の保険適応薬よりずっと安いです。
●使用を中止すべき副作用は、突然の激しい頭痛や胸痛、ふくらはぎの激痛、目がかすんだり二重に見えるなどです。
その他、悪心、乳房痛、嘔吐、下腹部痛もみられることがあります。
●なお、長期投与を行う場合は、6ヶ月ごとの検診、また、1年に1回、子宮・卵巣を中心とした骨盤内臓器の検査、特に、子宮頚部の細胞診の実施を考慮すること。
●また、飲み忘れなどがないよう注意しなければなりません。
(本よりの抜粋)
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