酋長ツイアビは、ポリネシアの自分の国の人びとのためにだけ、その話を考えた。

 訳者エーリッヒ・ショイルマンは、第一次世界大戦前の暗い時代に成人、何不自由なく一生を過ごせる身分であった。しかし、三人の子の死を契機に周囲の反対を押し切りサモアへと渡る。
 そして1920年、バーデンのフェルゼン社発行によりその書は世に出たのである。

  
パパラギ

  

 それは、酋長ツイアビの心と言葉を翻訳、編纂した書である。大戦終結後のヨーロッパ人の、心に訴えるものがあったのだろう。世界各国語に訳され、多くの人びとに読まれたという。

 それから約60年、再び「パパラギ」は世に出る。
ベルトールト・ディールの手になるそのドイツ語版は、1977年に発行されるや20万部をはるかに超えたという。日本語訳をした岡崎照男の出会ったのはこのドイツ語版である。

あなたにそよ風をお送りします 

 岡崎氏は、あとがきをこのように書きはじめる。自身の妹のために訳し始めたというその書はやがて、日本中の若い人たち、文明の進み具合について、どこか変に思っている人たちにも読んでほしいと訳者に思い至らせ、1981年、立風書房よりの刊行となったのである。

 そして、私もこの「パパラギ」と出会った。

 以来、何度私はこの書を読み返したろう。酋長ツイアビの言葉は私の中にある「縄文人」にシンクロし、そのたびに私の価値観を、視点を大きく転回してくれた。

 あれからおよそ20年、今また読み返している。そして、思うのだ。

 もっとたくさんの人びとが、この書と出会ってほしい。酋長ツイアビの言葉に耳を傾けてみてほしい、と。

 きっと、あなたは考え始めるだろう。

 
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 しかしまた、この考えると言うことも彼、酋長ツイアビに言わせれば重い病気とされるのであるが。