「酒は百厄(薬)の長?」 −20−
坂本 隆
第20回 未成年者の飲酒 〜 しらふで悩んで成長〜
日本には「未成年者飲酒禁止法」という立派な法律があるのに、子どもたちは実際には
かなり飲酒をしています。ではなぜ未成年者は飲酒してはいけないのでしょうか。
Rさん(16)は高校2年生。成績が伸び悩み、希望する大学への進学は難しいといわれています。そこに失恋という痛手を受けてしまい、どうしてよいか分からなくなりました。家でお父さんのウィスキーボトルを見つけ、口にしてみました。酔いが回るとぼーっと宙に浮いたような気持ちで、今までの悩みがどうでも良いように感じます。調子に乗ってグラスを重ねるうちに目の前が真っ白になって倒れてしまいました。帰宅した家族が救急車で病院に運び、急性アルコール中毒の治療で事なきをえました。
子どもは心身ともに成長過程にあります。アルコールの代謝酵素なども未完成なため、
大人に比べて急性アルコール中毒になりやすいのです。とくに新入生歓迎時期の「一気飲
み」による死亡事故があとを絶たないのは問題です。飲酒運転によるバイクなどでの事故
の危険性もあります。
もうひとつの大きな問題は、飲酒による現実逃避が若いうちから行われると、きちんと
悩んで成長することができなくなることです。思春期というのは人生の中で最も悩みの多い
時期でしょう。自信がなく、他人からどう評価されているかが気になり、どう生きるべき
か、何になりたいのか等々、毎日がさまざまな悩みの中にいます。そうした悩みをきちん
とすることで人格が次第に形成され、困難を乗り越える力ができていくのです。
酒に酔うというのは、脳を一時的にマヒさせて悩みを感じさせないだけです。酔って嫌
なことを一時的に忘れるという習慣が早い時期にできてしまうと、心の成長がストップし
てしまうことでしょう。また、十代から習慣的な飲酒を開始するとわずか数年で若年のア
ルコール依存症になってしまう危険も大きくなります。また子宮や卵巣、精巣などの生殖
器官にも悪影響を与え、健全な子どもを産めなくなる可能性もあるのです。
「少年は グラス持たずに 悩み抜く」

イラスト・成田 富子
(さかもと・たかし 藤代健生病院院長)
(「東奥日報」 2002.11.10 「家庭・暮らし」面「健康」欄に掲載)
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