なかなか禁煙できずにいた愛子さんは、検診で医師の口からたばこがどんなに危険な毒物かということを詳細に聞き、なんと禁煙をお手伝いする外来があることを知りました。
愛子さんが早速、禁煙外来に見えたのはその翌日でした。
診察室に入ってきた愛子さんは顔色のくすんだ、元気のない女性に見えました。声も聞いた瞬間にたばこを吸っていた人かなと思われるような、かすれたスモーカーズボイスです。女性でしたが、いかもにヘビースモーカーという風ぼうでした。
ニコチン依存を測るファガストロームテストをしてみると、愛子さんのニコチン依存は強く、ニコチンは愛子さんの気持ちを無視して、愛子さんをしっかり縛りつけているようでした。
愛情あふれるお父さんへの思い、受動喫煙でがんにしてしまったと嘆く愛犬モモヘの思いを伺い、愛子さんの優しい気持ちと禁煙への強い希望がよく分かりました。愛子さんはこんなにもほかの人に迷惑で、大切な家族を奪い、愛犬を苦しめているたばこをやめることができない自分を責めていました。
そんな自分を責める気持ちが強ければ強いほど、ますますたばこをやめることができませんでした。たばこを吸った瞬間の心地よい気分がほんの一瞬だけ、逃れようのない苦しさを忘れさせてくれましたが、次の瞬間「ああまた吸ってしまった」という自責の念が、ますます愛子さんを苦しめていました。
愛子さんにとってたばこがやめられないのは、愛子さんの意志が弱いからではないようです。ニコチンという中毒性の薬物に対する反応は体質が絡み、たばこのやめにくさも人それぞれですが、どうやら愛子さんの場合は十分な動機があっても、ニコチンへの親和性が高く、それがたばこをやめられない原因である可能性が高いようでした。
カウンセリングの結果、愛子さんは完全に断煙し、ニコチンガムの力を借りながらたばこから逃げる方法で禁煙を始めました。