唯一の家族であるお父さんを肺がんで亡くし、部屋の中で飼って副流煙を吸わせていた大のモモも鼻のがんになり、たばこの恐ろしさを痛感した愛子さんは、ようやくお父さんの遺言の通りに禁煙に挑戦し始めました。
とはいえ、いきなりやめるのは自分にはとても無理のような気がしました。そこで、一週間に1本ずつ減らす方法でやってみました。
減らす本数が少ないうちは良かったのですが、だんだん我慢がつらくなり、こっそり買い足したり、ほかの人からもらってしまったりして、全くうまくいきませんでした。何だか、来る日も来る日も我慢ばかりで、ちっとも楽しくありませんでした。
きっぱりやめようと頑張ってもみました。でも独りぼっちの挑戦は孤独です。きょうから一生吸わないと想うと、怖くて怖くてたまりません。いらいらは強いのに、頭の中はジーンとしぴれたようになり、霧がかかったようにポーッとして、集中力が出ません。何だか心臓の鼓動もゆっくりになってしまったようです。「吸いたい、吸いたい」と思うといてもたってもいられ
ず、たばこのことばかり頭に浮かぶようになりました。
結局、断煙は一日たりとも続かず、昼にはもうたばこを買いに行っていました。このまま、一生たばこと縁が切れないような気がしてきました。「わたしにはたばこが必要かもしれない。健康に悪くても禁煙でこんなに苦しい思いをするくらいなら、やめるより吸っていた方が体にいいかもしれない」。愛子さんはそんなことまで考えるようになりました。
でも、お父さんの遺影を見るたび、心が痛みます。弱ってきてよろよろと甘えてくる犬のモモの鼻を見るたび、申し訳なくて痛々しくて涙が出てきます。
でもたばこを吸いたい気持ちだけは自分の力ではどうにもなりませんでした。やめたくてもやめられない自分が嫌になり、たばこの本数はむしろ増えてしまいました。次回に続く