禁煙外来でたばこをやめた人の実例が知りたい。そんな声にお答えして、禁煙に成功した人のご紹介をしたいと思います。来談者の皆さんのプライバシーを考慮して、背景は若干脚色してあることをお断りしておきます。
禁煙外来を始めたころ、第一号で相談に来てくださったのは愛子さん(仮名)でした。愛子さんは54歳。父一人子一人の二人家族でしたが、前の年に大切なお父さんを肺がん亡くしたばかり。お父さんはほかのことは三日坊主でも、たばこだけは雨の日も風の日も風の日も休むことなく買いに行く人でした。
肺がんを告知されていたお父さんが「亡くなる直前に愛子さんに残した遺言が「禁煙」でした。「愛子、肺がんは苦しい。そして悔しい。愛子、もっとお前と一緒にいたかった。たばこは怖い。たばこだけはやめろ。今ならまだ、間に合うかも知れない」
娘思いのお父さんはたった一人の家族に最後の説教をした後、こん睡状態となり、シューシューという酸素や物々しいモニターの電子音の中で、帰らぬ人となりました。
それから、ずっと禁煙したいと思っていた愛子さんでしたが、18歳の時から吸ってていたたばこです。たばこのない生活なんてとても考えられませんでした。物心ついた時からたばこを離さなかったお父さんとの思い出もたばこの煙のにおいとともによみがえるような気がして、一服しては寂しさしさを紛らしていました。
そんなある日、かわいがっていた犬のモモの鼻にがんができました。犬に一本2万円の抗がん剤を週に2回打つ治療を受けさせながら、愛子さんは思いました。
「部屋の中で一緒に生活していた犬のモモまで、がんになってしまった。今度はわたしの番かも知れない。モモごめん。あなたには何も罪はないのにね。お父さんの遺言通り、たばこをやめる努力をしてみるわ」
でも、愛子さんの努力はなかなか報われませんでした。次回に続く