「高齢者」とたばこ(減煙法始め禁煙に成功)
 

 高齢者の方にとってたばこは特別の感慨あるものではないでしょうか。戦争中、たばこは配給で貴重でしたし、天皇から菊のご紋の「恩賜のたばこ」を賜る制度もありました。大人の男性は吸うのが当たり前の時代でした。「今さら体に悪いと言われたって、もうわが人生に悔いはない」とおっしゃる人生の先輩に対して、おしりの青い医師が何かを申し上げるのは余計なお世話でしょう。

 しかし実際は、禁煙に遅すぎるということはないようです。わたしは地域の健康講話で出かけることも多いのですが、その時の話がきっかけで禁煙に成功した高齢者の方のうれしい感想をうかがうにつけ、疎ましがられることを恐れずに、医師から必要な情報をお伝えするのは間違っていないかもしれないと実感しています。

 身体予備能力が低下した高齢者の方にとって、心臓や呼吸器系への負担を楽にする禁煙は大変重要です。せきやたん、息切れ、胸の苦しさなどの症状はたばこをやめるといつの間にかなくなっていたという話はよくあることです。元気な方もスタミナが続くようになったとおっしゃいます。

 動脈硬化、高血圧の治療は、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などの合併症の予防が主な目的となるのですが、たばこを吸っていると血圧を下げても「あたり」は防げないことが、全国規模の医療機関がまとめた高血圧患者調査で分かっています。

 脳卒中後遺症の患者さんのお宅に往診にうかがうと、再発作の引き金となるたばこが寝たきりのまくらに用意されている光景をよくみかけます。患者さんにとってたばこは本当に唯一の楽しみなのでしょうか。「たばこをやめたら孫がひざの上に乗るようになった」と目を細める患者さんのお話をうかがうにつけ、つくづくと考えてしまいます。

 若い人と違って人生経験の豊かな高齢者の方はやめやすいし、たばこを減らす減煙法から始めても禁煙はうまくいくようです。だまされたと思ってしばらくやめてみませんか。