(2000年4月発行のパンフレット「アルコール専門外来のお知らせ」より)
あなたは、毎日朝からお酒を飲んで仕事にも行かず、路上で寝ていたりする人や、人にからんだり、暴力をふるう人を「アル中」だと思っていませんか?
だから自分はまだ「アル中」なんかじゃない、と思っていませんか?
今日では「アル中」という医学用語はありません。
・二日酔で仕事を休んだり、大事な約束を守らないことがときどきある
・今日だけは飲まないと思っても、つい飲んでしまう
・大酒飲みと非難されたり、酒くせが悪いと言われる
・このへんでやめようと思っても酔いつぶれるまで飲んでしまう
・酔った時のことを思い出せないことがある
・休日には朝から飲む
・酒が切れると汗が出たり、手がふるえたり、いらいらしたりする
・飲まないと眠れない
・酔うと怒りっぽくなる
・飲み始めると何も食べない
・酔いだけを求めて飲む
・かくれて酒を飲む
・晩酌だけですまず、一日に何度も飲む
・迎え酒をする
・飲んだ後で後悔する
・しばしば酒をやめようと思う
こういうことにあなたはあてはまりませんか?
「医者から酒を止められているのにやめられない」「一杯だけにしておこう、と思っても飲みだすと止まらないことがある」。つまり、うまくお酒を飲めない、お酒を飲むことを上手にコントロールできない、こうした症状をもつ病気をアルコール依存症といっています。アル症はアルコールに依存する病気なのです。
この病気ではアルコールへの精神的依存(病的な飲酒行動となる)・身体的依存(離脱症状として現れる)によってお酒を飲まざるをえない状態になります。「意志が弱いから」とか「道徳的に劣っているから」とか、「家族のことを考えないから」飲んでしまうのではありません。病気の症状としての問題飲酒なのであり、アルコールの害により、正常な判断ができなくなっているのです。
(1) 少量分散飲酒
晩酌だけでは済まなくなり、一日に何回も飲酒します。
(2) 飲酒中心性(酒をいかにして飲むかが生活の中心になること)
自分の体・家族・職場等を省みずひたすら飲酒します。
(2')「負の強化」への抵抗
飲酒がもたらす害悪について分かっているがやめられないことです。
(3) 抑制障害の出現(コントロール喪失飲酒)
飲み始めるとトコトンまで飲んでしまい、適量で抑制できなくなります。
(4) 連続飲酒発作(続け飲み発作)
飲んでは寝、さめては飲む状態が数日から10日以上におよびます。
(5) 山型飲酒サイクル:
連続飲酒発作と禁酒(飲めなくなってダウン)の繰り返しとなります。
アル症の究極の飲酒パターンといえます。
つまり、少し酒の量が多い、とかいうことではなく、飲み方自体が病的になってしまっているのです。一言でいうと酒に対するブレーキが壊れてしまったことであり、現在の医学ではこの壊れたブレーキを修理する方法はありません。
もう、上手に飲むことはできないので、断酒するしかありません。
身体的依存がある場合には、本人がお酒を飲みたいとか飲みたくないとかには関係なく、体がアルコールを要求しているために、酒が切れると離脱症状(いわゆる禁断症状)が出てきます。
離脱(禁断)症状
・吐き気、嘔吐、発汗、寝汗、胸がどきどきする、食欲がない。(自律神経症状)
・いらいら、落ち着きがない、不安、神経がピリピリする。(情緒障害)
・眠れない、こわい夢を見る。(睡眠障害)
・手足が振える、まっすぐ立って歩けない。(振戦)
・けいれん発作(いわゆる「アルコールてんかん」)
・幻視、幻聴、妄想(現実にはないことをあるように思い込む)
・振戦せん妄(意識がくもり、手足が振え、興奮したりする)
この病気は飲み続ける限りは慢性に進行していきます。そしてついには様々な合併症などで早死にしてしまうのです。「まだ大丈夫だろう」と思っているうちに取り返しのきかない状態になってしまいます。アル症の平均死亡年齢は52、3歳ともいわれます。
どんな病気でも早期発見、早期治療が一番です。
「アル中」と言われたら「メグサイ」(津軽弁で「恥ずかしい」の意味)、とためらっているうちに病気はどんどん進んでいきます。病気と気がついたら治療を受けることがどうして恥ずかしいことでしょうか。病気と認めようとせず、治療をうけようとしないことの方が恥ずかしいことではないでしょうか。
機会的飲酒
↓
常習飲酒
↓
精神依存 ←─────────────────┐
│
│
↓
│
過剰飲酒・耐性の変化
│
(初期には上昇、末期には低下) 離脱症状の回避(再飲酒)
│
↑
↓
│
身体依存の形成───────────→離脱症状の出現
↓
合併症悪化 潰瘍、肝硬変、膵炎
│ 糖尿病、高血圧、心臓病
│ 脳卒中 など
↓
死亡
あなたも断酒できます。
何度も酒をやめようとしてきたが、やはりだめだった。とてもやめられそうにない、と思っていませんか?そう思うのも無理はありません。けれどもこの病気になっても断酒を続けて社会生活に復帰している人が大勢いるのも事実です。
信じられなければ自助グループ(アルコール依存症者自身の集まり:断酒会とAA=アルコホーリクス・アノニマス、とがある)の例会に参加してみるとわかるでしょう。
けれども現在、断酒している人達もはじめから簡単に断酒ができたわけではありません。アルコール依存症専門の医療機関に入院や通院を続け、抗酒剤(アルコールの分解を抑制する薬であり、飲酒するとすぐに悪酔いする)を服用し、自助グループに通い続けるなかで断酒に目覚めた方が多いようです。
この病気を治すには、なによりも病気であることを自覚し、「敵」を知らなければなりません。この病気のやっかいなところは、病気の症状のひとつに「否認(きちんと病気を認めることができないこと)」があることです。否認を克服して、真剣に断酒の道を踏み出そうとするなら、もう半分近く回復したようなものですが、断酒の継続はそう簡単なものでありません。飲酒の誘惑はどこにでもあります。
そのためには専門の医療機関に通い、断酒への決意をより確かなものにし、完全にアルコールを断ち続ける以外に方法がありません。
そのためにも、医療機関に早く相談し、自助グループ(断酒会やAA)に通い、同じ病気を持った仲間と共に治していくことが大切です。
こうして多くの人々が断酒を継続しています。あなたにもそれができます。
の3つの治療があります。
アルコール離脱時の幻覚症状や意識障害のあるとき、身体衰弱のひどいときなどは入院が絶対的に必要になります。それ以外は外来通院やデイケア通所で治療は可能です。
・グループミーティング
話し合いのなかでアルコールに依存していた心の問題を考え、自分を変えていきます
・自助グループのメッセージ
AAや断酒会のメンバーによる模擬例会(ミーティング)に参加します。
・自助グループの例会やミーティングへの参加
実際の自助グループに参加して体験談を聞いたり話したりします。
<脳・神経系>
のういしゅく ちほう しょうのうへんせいしょう
[中枢神経]アルコール性脳萎縮、アルコール性痴呆、アルコール性小脳変性症
のうしょう しょうこうぐん のうしょう
ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群、ペラグラ脳症
のうこうそく、のうしゅっけつ、いっかせいのうきょけつほっさ
脳梗塞、脳出血、一過性脳虚血発作
まっしょうしんけいえん
[末梢神経]末梢神経炎
<胃腸(消化器)系>
えん、
かいよう がん、 じょうみゃくりゅう
[食道]食道炎、食道潰瘍、食道癌、食道静脈瘤
しょうこうぐん、いかいよう
[胃]胃炎、マロリーワイス症候群、胃潰瘍、出血性びらん
じゅうにしちょうえん、じゅうにしちょうかいよう
[十二指腸]十二指腸炎、十二指腸潰瘍
しぼうかん かんえん、かんせんいしょう、 かんこうへん
[肝臓]脂肪肝、アルコール性肝炎、肝繊維症、慢性肝炎、肝硬変
すいぞう すいえん すいえん
[膵臓]急性膵炎、慢性膵炎、二次性糖尿病
<心臓、血管系>
しんきんしょう、 こうそく
高血圧、アルコール性心筋症、冠不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈
<骨・筋肉系>
だいたいこっとうえし、こつそしょうしょう
特発性大腿骨頭壊死、骨粗鬆症
おうもんきんゆうかいしょう
横紋筋融解症
<肺・呼吸器系>
ぜんそく、 けっかく がん
気管支喘息、肺結核、気管支炎・肺炎、肺癌
いんとうえん、いんとうがん、こうとうがん
慢性咽頭炎、咽頭癌、 喉頭癌
<血液>
貧血、白血球増多、血小板減少(出血傾向)
高尿酸血症